【2023年11月版】EPC企業における「Non-FIT事業」の実態
平素よりコラムをご購読いただき、誠にありがとうございます。
今、Non-FIT市場が急拡大を見せていますが、同時に皆さまからよく聞くのが、
「本当に売れている?」
「販売単価はどのくらい?」
「太陽光用地はどれだけ確保している?」
「開発コストはどのくらい?」
などのご相談が非常に増えています。
今回はEPC側の実態として、各社へのヒアリング結果を共有させていただきます。
EPC企業のNon-FIT事業の実態
産業用太陽光業界では、Non-FIT事業が盛んにニュースに取り上げられており、需要家・小売電気事業者・発電事業者などの各方面から「Non-FIT発電所を〇〇MW分買いたい」、「Non-FIT電気を〇円/kWhで買いたい」などのご相談が急増しています。
おさらいとして、Non-FIT事業の代表的なスキームは「オフサイトコーポレートPPA」ですが、
本来は案件は下記の順番で発生します。
①需要家(再エネ調達を推進する企業)
↓
②小売電気事業者・アグリゲーター
↓
③発電事業者
↓
④EPC企業
何が言いたいかというと、
「どれだけ良い発電所を作ったとしても、需要家が購入を決断しない限り、永遠に売れない」
ということです。
また上記のように、EPC企業から需要家まではどうしても距離感があり、直接商談を行うことはめったにありません。
したがって、用意した発電所の情報は③発電事業者⇒②小売電気事業者・アグリゲーター⇒①需要家の順に流れていき、初めて成約に至るのです。
「FIT物件のように売れない」のはこの時点で理解いただけたかと思います。
加えて、最近では、発電所買取側の条件変更も気になる所です。
「物件買取を停止する」
「発電所買取から電力買取に変更する」
「当初の買取条件を変更する(複数回)」
等が散見されます。
Non-FITの市場自体がまだ確立しておらず、需要家各社の再エネ調達意向もバラつきがあることから、
EPC側にとっては、事業計画を立てにくい状況にあるようです。
【相場観】他社EPC企業の動向
このような状況の中、他社EPC企業では、どのようにNon-FIT事業を進めているのでしょうか?
今回は下記項目で、ヒアリングを実施し、その結果をまとめました。
(※当社主催のスマートエネルギー研究会会員様(EPC企業)へヒアリング)
〔ヒアリング事項〕
①Non-FIT発電所用地仕込み件数は?
②Non-FIT発電所用地獲得の販促方法は?
③Non-FIT物件の成約件数は?
④Non-FIT物件開発コストは?
①Non-FIT発電所用地仕込み件数は?(2023年1月~)
1位:1件~10件(46%)
2位:10件~30件(27%)
3位:50件以上(18%)
②Non-FIT発電所用地獲得の販促方法は?
1位:紹介(48%)
2位:チラシ(29%)
3位:飛込み(9%)
③Non-FIT物件の成約件数は?
1位:0件(85%)
2位:1件~30件(10%)
3位:30件以上(5%)
④Non-FIT物件開発コストは?(土地代・負担金・工事込)
1位:10~13万円/kW(38%)
2位:15万円以上/kW(29%)
3位:10万円以下/kW(24%)
一気にご紹介をいたしましたが、実態の数字から分かることは
「情報はたくさんあるが、売れていない」です。
いわゆる業界を代表するトップクラス企業では、多数の実績があるように伺えますが、中小クラスのEPC界隈では、「まだまだこれから」という状態が続いています。
Non-FIT物件が売れるEPC企業になるために
Non-FIT市場が今後の拡大する見通しの中、中小EPC企業として取り組むべきことをお伝えいたします。
【その①】「FIT事業」のビジネス感覚はリセットする
Non-FITは「法人向け再エネビジネス」です。また、FITのように、売電期間や売電単価が統一されているものではなく、開発条件がこれまで以上に細かく制定されているので、案件成約までは長期化することを念頭に置きましょう。
【その②】好条件企業よりも、販売確実性の高い企業へ「0→1」の実績作りを
上記でもお伝えした通り、「法人向け」である以上、過去実績などの信用度も受注に大きく影響します。
EPC側としては、「高単価で購入する企業へ販売したい」と考えるのが普通ですが、Non-FIT事業の一連の流れを知るためにも、低単価案件であったとしても、確実に購入いただける企業への販売に注力してください。その結果が、次なる大型案件獲得の布石となります。
【その③】販売先資料や情報開示を徹底する
EPC企業が確保する発電所用地、および、発電シミュレーション、部材構成などが分かるプレゼン資料を用意しましょう。
「リストを送っている」というEPC企業が散見されますが、そのリストで購入判断をする企業側になると、あまりにもリスクが多すぎます。 買取候補先から言われずとも、補足資料として、出せる情報は全て出していきましょう。
いかがでしたでしょうか?
Non-FIT市場は始まったばかりであり、来年度も補助金なども予算増加を予定しています。
既に取り組みを開始している企業も多いようですが、改めて、現状を知り、今後の作戦を再検討いただくことをお勧めします。
本日もお読みいただきありがとうございました。
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