【FIP制度】経済産業省による制度設計やアグリゲーターの役割・収益性をわかりやすく解説!

【FIP制度】経済産業省による制度設計やアグリゲーターの役割・収益性をわかりやすく解説!

 

産業用太陽光発電時流予測レポート
産業用太陽光業界時流予測レポート2024 ~今後の見通し・業界動向・トレンド~

 

FIP制度とは?

FIT(Feed-in Tariff)制度は、一般家庭や事業者が再生可能エネルギーで発電した電気を、定められた期間中に「固定価格」で電力会社が買い取ることを国が約束する制度です。
 
一方、FIP(Feed-in-Premium)制度は再エネの電気を市場または相対で取引する場合、電力市場に上乗せして「プレミアム」を交付することを国が約束する制度です。
 
2022年度より、再エネ電源の自立化・市場統合のため、FIT制度からFIP制度への移行が始まります。それに伴い、発電事業者・送配電事業者・交付金算定機関の業務が変化しています。
 
 

<発電事業者・認定事業者>
 
FIP制度においては、発電事業者は、自ら市場や相対で取引しなければならないため、以下3つの追加的な業務が発生します。
 
①卸電力市場取引会員となり卸電力市場取引する、または電力供給先である需要家と自ら相対の契約をする必要があります。
②発電計画と実際の発電量が異なるとペナルティが発生するため、インバランス回避のために正確に発電予測を自らが行う必要があります。
③再エネのもつ非化石価値を非化石価値取引市場等で自ら取引することができます。
 

<送配電事業者・買取義務者>
 
FIT制度においては、広域機関から買取義務者に交付金が支払われ、その後買取義務者から認定事業者にFIT交付金の入金が行われていました。
 
しかし、FIP制度においては、広域機関から直接認定事業者にプレミアム交付金が支払われます。
 
FIT制度で買取義務者であった送配電事業者等は、FIP制度においては、交付金算定の業務が不要となり、「供給電力量の算定」の業務をメインで行うこととなります。
 
 

<交付金算定機関>
 
FIT制度では、一般社団法人低炭素投資促進機構が交付金の算定や買取義務者への入金を行っていましたが、2022年度より、「電力広域的運営推進機関」が交付金算定や入金を行うこととなります。
 

プレミアムはいくらになるのか?

プレミアムは「基準価格」から「参照価格」を引いたもので、毎月計算し直し、決定されます。
 
 

<基準価格>
 
基準価格はFIT制度における調達価格と同じで、電気の供給に要すると認められる費用を基礎として定められています。
 
 

<参照価格>
 
参照価格は、卸電力市場の価格、非化石価値取引市場の価格に連動し、機械的に決定されます。
 
具体的な計算方法は、卸電力市場の前年度の平均市場価格+卸電力市場の当月補正価格(当年度と前年度同月を加重平均する)+直近一年分の非化石市場の平均価格-バランシングコスト(インセンティブとして交付される額)です。
 
 

ここで例をあげて考えてみましょう。
 

<case1:市場取引パターン>

  • 基準価格=10円/kWh(2022年度太陽光高圧FIT価格)
  • 参照価格=6円/kWh
  • 市場価格=5円/kWh

この場合の発電事業者の収入はどうなるでしょうか?
プレミアム=基準価格10円/kWhー参照価格6円/kWh
=4円/kWhとなります
 
プレミアムに市場価格を足して9円/kWhが発電事業者の収入となります。
 
<case2:相対取引パターン>

  • 基準価格=10円/kWh(2022年度太陽光高圧FIT価格)
  • 参照価格=11円/kWh(前年度が市場高騰した場合)
  • 相対価格=7円/kWh(コーポレートPPAの契約電気単価)

 
この場合の発電事業者の収入はどうなるでしょうか?
プレミアム=基準価格10円/kWhー参照価格11円/kWh
=-1円/kWhとなります。
 

注意すべき点は、プレミアムは「マイナス」になることはなく、0円/kWhを下回る場合は「0円/kWh」として算出されます。
そのため、この場合プレミアムが発生しないため、相対価格の7円/kWhが発電事業者の収入となります。

 

FIP制度は、前年度市場高騰が発生してしまった場合、当年度のプレミアムが全く交付されない、というようなリスクも孕んでいます。
特に、昨今欧州での電力市場の高騰の原因であるLNG不足がこのまま続けば、日本でも市場価格高騰が続く可能性があるので、来年度の参入には注意が必要です。

どのようにFIP制度を活用するのか

先ほどの例のように、FIP制度の活用方法は市場取引と相対取引(コーポレートPPA等)の2パターンあります。
 
しかし、発電事業者自らが「市場取引」や「相対取引先である需要家と契約する」ということは考えられにくいでしょう。
 
そのため、市場取引や相対取引契約を代行する事業者が必要であり、「再エネアグリゲーター」の活躍の機会となります。
 
 
再エネアグリゲーターは、

  1. 発電量の正確な予測・発電計画の作成
  2. 再エネに併設する蓄電池のアービトラージ(IoTによる制御)
  3. 最適な市場取引/相対契約先(需要家)の集客
  4. インバランスリスクやプロファイルリスクを発電事業者に代わり、負担する

という4つの業務を行うこととなります。
 

バランシングコストは、2027年に0.6円/kWhとなるので、基本的に0.6円/kWhでリスクマネジメント含め上記の業務を行わなくてはなりません。
 
市場取引か相対契約かどちらでFIPを活用すべきか、については、どちらもボラティリティがありますが、コーポレートPPAなど相対契約の方が契約期間や電気料金単価を事前に設定することができ、投資の見通しがあるため、金融機関からは融資がされやすい可能性が高いです。
 

【試算】FIP電源を制御するアグリゲーターの収入

では、FIP制度を活用した発電所を5MWアグリゲートした場合の、アグリゲーターの収入をシミュレーションしてみます。

★卸市場価格と市場取引のタイミング

時間 10:00~11:00 13:00~14:00 14:00~15:00 15:00~16:00 16:00~17:00
卸電力価格 4円/kWh 5円/kWh 6円/kWh 7円/kWh 8円/kWh
プレミアム 4円/kWh 4円/kWh 4円/kWh 4円/kWh 4円/kWh
非化石価値 1円/kWh 1円/kWh 1円/kWh 1円/kWh 1円/kWh

この表の数値をすべて合計したのが55円(5時間/日)となります。

年間300日、すべて55円/kW/日で売電できると仮定すると、その場合のFIP発電事業者の収入は55円/kW/日×300日/年×0.73(発電所の損失係数)として計算することができます。

つまり、発電事業者は年間60,225,000円の売電収入を得ることとなります。

発電事業者がアグリゲーターに売電収入のうち、20%を手数料で支払うと仮定します。その場合アグリゲーターは、手数料で12,045,000円/年収入を得ることができます。

一方でアグリゲーターには、市場取引ができるシステムの導入が必須であり、コストも大きいです。

FIP制度で稼ぐには、正確な発電予測と蓄電池の導入が必須

アグリゲーターとして、FIP制度で稼ぐためには、まず正確な発電予測のシステム導入が必須です。それは、計画値と実発電量の差であるインバランスを回避する必要があるためです。

次に蓄電池の導入もあると良いでしょう。。卸電力市場価格が高いタイミング(=太陽光が発電しない夕方・夜)に市場取引を行うことで、FIP発電所の収入を最大化させます。

以下レポートでは、

  • 産業用太陽光事業の部材仕入れを取り巻く現状
  • パネル仕入れの今後の方向性
  • 本レポート読了後のアクション

を紹介しています。

ぜひご活用ください!

産業用太陽光発電時流予測レポート

本日もお読みいただき、誠にありがとうございました。
 

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