【利回り検証】2021年以降のFIT制度を活用した野立て太陽光について

【利回り検証】2021年以降のFIT制度を活用した野立て太陽光について

 

産業用太陽光発電時流予測レポート

 
今回は、今後開催される第10回、11回のFIT入札について、仮に10円/kWhで落札した際に利益が取れるのかを検証していきます。
 

21年度FITルールのおさらい

21年度よりFIT制度が大きく変更され、低圧案件での全量売電は原則としてできなくなりました。例外的に、、農地一時転用許可期間が 10 年間となりうるソーラーシェアリング案件については、全量売電が可能と定められていますが、農業法人を持たないEPCでは、依然としてソーラーシェアリングの実施は困難です。
 
一方で、高圧案件では、変わらず全量売電が可能です。
 
本年度より入札は250kW以上と範囲が広げられており、また、落札の上限価格も事前に公表されていることから、参加へのハードルが低くなっています。
 
さらに、高圧案件では、接続契約に半年以上かかることもありますが、入札案件では、事業計画提出時及び落札時点では接続契約が完了している必要はありません。
 
電力会社との接続契約の完了、設備認定の取得は、入札結果が公表された日の翌日から起算して7ヶ月後までとされており、通常の高圧案件が事業計画を提出する時点で接続契約が完了させておかないと行けないというルールと比べると、スケジュールに余裕があります。
 
 
下記は2021年度と2022年度の高圧案件の買取価格及び入札案件の上限価格です。
 

<非入札>高圧太陽光50kW~250kW未満
2021年度:11円/kWh+消費税
2022年度:10円/kWh+消費税
※買取期間は20年間

 

<入札>高圧太陽光250kW以上
2021年度開催分上限価格
第8回入札:11円/kWh+消費税(終了)
第9回入札:10.75円/kWh+消費税(終了)
第10回入札:10.5円/kWh+消費税
第11回入札:10.25円円/kWh+消費税

 
2022年度開催分
 
※未定
 
 
なお、8月1週目の現時点では、250kW未満の非入札の高圧案件の新規申請は、期限までに間に合わない可能性が非常に高いです。
 
2021年度FITの申請締切日は12 月 17 日(金)ですが、接続検討だけで約2ヶ月、その後の接続契約に約6ヶ月かかるため、最低でも8ヶ月以上電力会社との折衝で時間が必要なためです。
 
そのため、これから仕込む土地は、DC250kW以上のパネルを敷設して入札案件として、10月~11月におこなられる上限価格10.5円の第10回入札に参加するか、FIT10円を前提に来年度の250kW未満の非入札案件として準備するかどちらかを選ぶ必要があります。
 

第10回&第11回に向けたスケジュール

先述のように、入札案件であれば、事業計画の提出時点で、接続契約が終わっている必要はありません。最低限、電力会社との事前検討または、接続検討が完了していれば、入札に参加することができます。
 
※厳密には、事業計画提出時には、接続検討結果がなくても提出可能です。接続検討の申込書のコピーで代替可能です。しかし、正確な負担金が不明のまま入札に参加することになるため、事業性の判断がつきにくいためご留意ください。あくまで原則として、接続検討結果が判明してから事業計画を提出してください。
 

<250kW以上入札案件の手続きフロー>
①系統の空き容量の確認
②事前検討 1ヶ月程度 無料
③接続検討 2ヶ月~3ヶ月程度  接続検討費用22万円(税込)
④事業計画書提出
⑤事業計画の審査
⑥入札開始
⑦落札
⑧接続契約開始(※落札後7ヶ月以内に締結)

「④事業計画提出の締切日」は、第10回入札(上限価格10.5円/kWh)は10月15日、第11回(上限価格10円/kWhは締切日が2022年1月21日です。
 
そのため、第10回の入札に参加しようと思うと、今月中に接続検討を開始する必要があります。これからAC250kW以上の太陽光を設置する土地を探す場合は、第10回入札には間に合いませんので、第9回入札への参加を前提に、9月~10月頃まで土地を探し、地権者様と交渉しつつ同時並行で接続検討を行えば十分に間に合います。
 
 
 
従来の入札では、上限価格が非公開で行われていましたが、今年度は事前に上限価格が公表されているため、上限価格未満で入札すれば落札できる可能性が非常に高いです。従来の土地仕込みのノウハウがそのまま活用できる最後のチャンスとなりますので、ぜひ、高圧入札にチャレンジしてみてください!
 

FIT10円でも利益は出せる!3年後着工での原価予想

第10回~11回入札において、10円/kWhで落札でき、設備認定を取得後3年先に着工したときの原価を予想します。
 
DC:750kW、AC:500kWとした際の想定原価が下記となります。

  • パネル→ 約2,250万円(30円/W)
  • PCS→ 約320万円(50kWPCS×8台)
  • キュービクル→約500万円
  • 架台→約675万円(0.9万円/kW)
  • 工事一式→約2,250万 (3万円/kW)
  • 負担金→約500万円(1万円/kW)
  • 土地代→約300万円

 
以上で、約6,795万円(9万円/kW)の原価となります。
 
土地代と負担金を除いた材工原価は7.6万/kWです。
 
 
年間発電量を約85万kWhとすると、FIT10円時の年間収入は約850万円となります。
 
上記の想定原価の金額帯で工事を行うことができれば、約12.5%の利回りとなります。
 
従来の案件と比べると表面利回りは低くなりますが、自社発電所として保有すれば十分な収益が期待できます。
 
また、完成物件として販売する場合であっても、粗利率を25%に設定すれば、販売金額は約9,300万円となり、エンドユーザーの表面利回りは約9.1%となります。
 
FIT14円や18円案件のようにな30%近い粗利を設定することは叶いませんが、今後、FIT案件が枯渇する中では、FIT10円であっても非常に魅力的な物件となることは間違いありません。
 
現時点においても、材工原価で7.6万円/kWに近い金額感で着工出来ているのであれば、今後のコストダウンの進み具合によっては更に大きな収益を期待できます。
 
 
オフサイトPPAや自己託送に代表されるように、FIT以外の方策で売電事業を行うスキームは続々と登場しています。しかし、20年間、固定価格で売電が保証されるFITは10円/kWh前後の価格とは言え非常に魅力的なスキームであることに変わりはありません。
 
 
先日、経産省より発表された第6次エネルギー基本計画は2030年までに約6割を脱炭素電源とし、太陽光だけで100GWもの導入を目指す、と示されました。
 
つまり、今後は2030年に向けて太陽光発電事業用地の奪い合いが更に激化されると予想されます。今のうちに、高圧太陽光の発電事業用地として土地を仕込み、FITの設備認定を取得しておき、2年後や3年後に、FIT認定を辞退し、より高価格での売電を期待できる別スキームに変更することも可能です。
 
 
これまで培ってきた「土地仕込み」のノウハウが最も生かされるのが今です。来年や再来年になると、更に競合が増える可能性が大いにあります。比較的競合他社の少ない今のうちに高圧案件用に土地を仕込みを再開することをおすすめ致します。
 
次週のメールマガジンでは、現在のモジュールやPCSなどの部材原価状況や廃棄費用積立制度や発電側基本料金などを踏まえたFIT高圧入札案件の事業性について検討いたします。
 
 
本日もお読み頂きありがとうございます。
 

産業用太陽光発電時流予測レポート

小冊子無料ダウンロード

環境エネルギービジネスセミナーのご案内

ページのトップへ戻る