蓄電池の逆潮流をアグリゲーションして調整力公募や需給調整市場、容量市場で取引するには?
CONTENTS
蓄電池の逆潮流をアグリゲーションして調整力公募や需給調整市場、容量市場で取引するには?
皆さま、平素よりメールマガジンをご愛読頂きありがとうございます。本日はアグリゲーターとして、産業用・家庭用の需要側リソースを集めてマネタイズすることの、検討状況や複数の市場取引した場合の仮シミュレーションをお伝えします。
逆潮流アグリゲーションとは?
発電設備で生産された電気が系統から需要家側へ流れることを潮流(順潮流)といいますが、反対に、需要家側から系統側へ電気が逆流することを逆潮流といいます。
逆潮流アグリゲーションとは、DSR(Demand Side Resources ; 需要家がもつ自家発電機や蓄電池等)に発動の指令をくだし、供出された電力をまとめて、市場に統合していくことです。
逆潮流アグリゲーションで供出される電力の価値は「調整力」です。
「調整力」は、系統安定化のため、一般送配電事業者が、①需要予測誤差②再エネ予測誤差③時間内変動④電力脱落の4つの事象に対応するために必要な電力のことです。
石炭や石油由来の発電所がもつ「慣性力」が再エネ普及拡大で不足するという問題を、DSRのもつ「調整力」のアグリゲーションで解決することができるため、「逆潮流アグリゲーション」はエネルギー業界の脱炭素化に向けて注目が集まっています。
逆潮流アグリゲーションの活用
「逆潮流アグリゲーション」で期待されていることは、以下のような需要家設備のもつ電力をマネタイズできることです。
- 家庭用蓄電池
- EV
- エコキュート
- ピークカット用産業用蓄電池
- コジェネ(地冷/工場)
特に家庭用蓄電池については、家庭用太陽光契約件数は全国で1万7000件あり、約80MWに相当するため、家庭用蓄電池を設置し、蓄電池のもつ調整力を集めて活用することに大きな価値があります。
上記のDSRうち、「高圧」の逆潮流アグリゲーションは、2022年度より「調整力公募」の電源Ⅰ´に入札し、マネタイズすることができます。
- <電源Ⅰ´詳細>
-
- 目的:猛暑や厳寒に対応するための調整力
- 発動時間:3時間以内
- 最低容量:1MW(1MW以下のDSRをまとめて1MWにして入札することも可能)
- 簡易指令システムでの指令
- 2021年度落札容量:4,273MW
- 2021年度電源Ⅰ´の「電源」の平均価格:5,295円/kW
例えば、非常用の自家発電設備の供出可能容量が1,000kWある場合、すべてを電源Ⅰ´で取引すると
1,000kW×5,295円/kW=529万5000円/年の収入が得られます。
※ただし落札した電源の出力の全部・一部が、TSOの占有となり、非常時にも使えなくなる可能性があるため、入札には注意が必要です。
また、「高圧」の逆潮流アグリゲーションは、2023年度の需給調整市場での取引開始に向けて議論が進められています。
では、低圧である「家庭用蓄電池」の逆潮流アグリゲーションのマネタイズはどのように検討されているのでしょうか…
家庭用蓄電池の需給調整市場の参入
家庭用蓄電池のポジワットのアグリゲーションは、現在、需給調整市場と容量市場の参入に向けて実証事業がすすめられています。
家庭用蓄電池のポジワットのアグリゲーションが認められるようになれば、需給調整市場と容量市場の両方で入札を行っていくことが想定されます。
- <仮定>
-
アグリゲーターとして、家庭用蓄電池を5,000世帯集めるとします。
家庭用蓄電池は9.8kWhのもので、
供出可能量(普段経済DR等でも使用していないが、貯まっている蓄電池容量)を2.6kW/台としたときを考えます。
- <需給調整市場からの収入>
-
三次調整力②で3時間、150日/年にわたって取引するとします。
需給調整市場の価格は、仮シミュレーションのため、ΔkWあたり2円とします。
その場合の年間収入は、
2.6kW×5,000台×2円/kW×3時間/日×150日/年=1,170万円/年
となります。
- <容量市場からの収入>
-
容量市場の価格を4,000円/kWとします。
その場合の年間収入は、
2.6kW×5,000台×4,000円/kW=5,200万円/年
となります。
5,000台の蓄電池の使っていない容量をまとめて取引すると、6,000万円/年以上の価値を創出することができるのです!
もちろん、各家庭への報酬の支払いも必要で、1年あたり仮に1万円を報酬として支払ったとしても、1,000万円/年程度が手元に残ることとなります。
家庭用蓄電池のアグリゲーションは、大口需要家のリソースのアグリゲーションと比較して、1件1件回って、蓄電池を設置されているお客様を説得しなければならないというコストがかかってしまいます。そのため、今から家庭用蓄電池を販売した時点で、「お客様の蓄電池を情報の取得・制御」の許可をとっておくことが今後有効になってきます。
現在、家庭用蓄電池はVPPとして制御するための改良がすすめられていて、市場価格と連動して充放電を行う機能(アービトラージ機能)の搭載も始まっています。
今、家庭用蓄電池を販売されていてアグリゲーターを目指している事業者様は、
- 取り扱っている蓄電池がVPP制御に対応しているか
- VPP制御を行う場合どのような契約内容にするか
- マネタイズをどうするか
について調査、検討をはじめてみてはいかがでしょうか。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。