【太陽光発電】太陽光パネル高騰の理由、対策と今後の時流

こんにちは。船井総研環境・エネルギービジネス.com 編集部です。
近年太陽光パネルが高騰しています。その事態をふまえ、原因と対策、今後について解説いたします。

1.太陽光パネル高騰の理由

まずは太陽光パネル高騰の原因について解説いたします。主な原因としては原材料の値上がり、円安、中国における電力不足と輸送費の高騰があります。

1-1.原材料の値上がり

1つ目は、原材料の値上がりです。太陽光パネルの製造には、銅やシリコン、鉄、アルミなどの原材料が使用されますが、これらの原材料価格が急激に高騰しています。2022年に入ってから世界情勢の不安定化などもあって、これらの原材料価格は急激に高騰しており、調達価格が上がっています。例えば主要な原材料であるシリコンの世界生産の約4割を新疆地区が占めているのですが、人権問題で供給に影響が出る懸念が浮上したため、シリコン価格は1年間で5倍近くに高騰しました。また太陽電池セルの主原料であるポリシリコン価格も需給のミスマッチを背景に上昇を続けております。

1-2.円安

2つ目は、円安です。太陽光パネルの多くは海外製であるため、円安の影響を受けやすく、実際に2022年に入ってから販売価格に反映されることとなりました。2022年の年明けから3月頃までは1ドル115円程度で推移していたものが、3月下旬以降急激に円安に進み、120円台、130円台にまで高騰。2023年に入ってからも1ドル130円代で推移しています。

1-3.中国における電力不足

3つ目は、中国における電力不足です。太陽光パネルの主要生産国である中国では石炭不足によって電力不足が発生しています。中国の石炭不足の理由として、国際的な厳しい目による石炭鉱山開発の遅れ、オーストラリアからの石炭輸入の停止、国外での火力発電所新設の遅れが挙げられます。中国は発電量の過半数を石炭に頼っているため電力が不足しています。それによって減産に踏み切る生産工場も多く、太陽光パネルそのものの生産量が減少していることが値上がりに拍車をかけていると考えられます。

1-4.輸送費の高騰

4つ目は、輸送費の高騰です。輸送費の高騰にはいくつかの原因があります。燃料価格の高騰、ドライバー不足、積載効率の低下と新型コロナウイルスの影響が主な原因とされています。燃料価格の高騰は、原油価格の変動によるものです。ドライバー不足は、物流業界で深刻な問題であり、人件費の上昇につながり、輸送費や配送料の価格改定につながっています。積載効率の低下は、小ロットで輸送する場合、トラックやコンテナの積載スペースを十分に活用できず、結果的に輸送頻度が増加し、余計な物流費がかかってしまうことによるものです。また、新型コロナウイルスの影響もあります。都市封鎖や港湾労働者不足、オンラインで物を購入する人が増えたことも輸送費の高騰に影響しています。それらによってソーラーパネルを海外から輸入するのにお金がかかるようになって来ています。

太陽光パネル高騰への対策

次に高騰している太陽光パネルへの対策について解説いたします。対策としては値上げ原因の解消を待つ、分離発注をする、一度導入効果を検討するという3つの対策があります。

2-1.値上げ原因の解消を待つ

値上げは短期的なトレンドであることが多いです。また世界的に太陽光発電を含めた再生可能エネルギーの需要は今後も高まっていきます。それは脱炭素化が世界的に活発になって来ているからです。脱炭素化とは、地球温暖化の大きな要因となっている、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出を抑えようという運動です。これらのことから、時間をおけば値上げ原因が解消される可能性は高いです。

2-2.分離発注をする

今後は、特定の商流に依存してパネルを一式で発注するのではなく、多少手間はかかっても、部材ごとに仕入れを行う分離発注を行うことが大切です。パネル価格高騰の状況下では、特定の1つの商流に仕入れを依存すると、欲しいときにほしい部材が手に入らなかったり、割高で購入しなければならなくなる可能性があります。当然、代替品の提案などは行っていただけますが、他の商流であれば従来と変わらない価格、納期で出荷できる場合もあるため、常に複数の商流とやりとりをし、最新の情報を取得した上で発注をしてください。

2-3.一度導入効果を検討する

施工店や販売店に一度相談することもお勧めです。なぜなら、経済産業省から固定価格買取制度を申請し、認定されると、その年度の売電単価が確保できるからです。固定価格買取制度の認定後、10kw未満の設備では1年以内、10kw以上の設備では3年以内に運転開始しなければなりません。この期限内であれば、設備設置や稼働までの猶予があります。つまり、現在のような状況で工事時期がまだ決まっていなくても、売電単価を確保することには意味があります。

毎年、電力会社への申請期限は容量によりますが10月〜11月、経済産業省への申請は12月〜1月頭とされており、毎年申請期限が近くなると施工店や販売店も申請関係で混み合います。また、申請に必要な書類も多く、すぐに申請できるものではありません。設備設置場所や内容を確認し、どのパネルをどれだけ配置し、レイアウトをどうするかなど決める必要があります。そのため、早めに施工店や販売店と話し合い、方向性を決めることが重要です。

3.太陽光業界の今後

最後に太陽光パネルの今後について、電気料金が高騰する点、非FIT発電所がさらに注目されるようになる点の二点について解説いたします。

3-1.電気料金は高騰する

今後も電気料金高騰の傾向は続くといわれています。電気料金が高騰する理由として、原油価格や天然ガスの価格が高騰していることが影響しています。新型コロナウイルスの影響で世界各地で経済活動が実質的に止まり、原油価格も大幅に下落しましたが、その後、経済活動の再開に伴い、価格の上昇が続いています。さらに、最近は中東で石油施設の爆発や火災などが相次いだことやウクライナを巡るロシアと欧米との緊張状態が続いていることから供給への懸念が強まっています。他にも、電気を作るための燃料の価格が市場や為替など外部要因によって変動することも電気料金に影響しています。

3-2.非FIT発電所がさらに注目されるようになる

2023年度産業用太陽光業界では非FIT発電所がさらに注目されるようになるといわれています。大手大企業は脱炭素化・電気料金削減のため、非FITの発電所及びその電力購入に対して本気で取り組みを進めるようになって来ています。非FIT発電所とは、固定価格買取制度(改正FIT法)に頼らない発電所のことです。非FIT太陽光発電所から発電された電気は、国や国民が買い取る義務がありません。そのため、電気の供給先にも環境価値を付与することとなり、100%再生可能エネルギーの電気と認めることが可能です。

このように太陽光業界は転換期を迎えつつあります。そこでは太陽光発電事業者が非FITで必須となる電力市場の知識について整理することが重要です。FITでは送配電事業者に電力購入義務があったため、知識が無くても事業が実施できました。しかし、今後、電気を売る事業者は、そのマーケットについて良く理解していないと、思わぬ損失を受ける可能性があります。このように転換にうまく対応していくことが今後の太陽光発電業者には必要になります。

4.まとめ

今回は太陽光パネル高騰の理由とその対策、太陽光パネルの今後について解説しました。
高騰の理由には原材料の値上がり、円安、中国における電力不足と輸送費の高騰があります。そしてその対策としては値上げ原因の解消を待つ、分離発注をする、一度導入効果を検討するという方法があります。さらに太陽光パネル業界は今後、電気料金の高騰が続き、また非FIT発電所がさらに注目されると予想しました。

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