【最新事例付き】系統用蓄電池の商品づくりのポイントを徹底解説!
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船井総合研究所の宮平です。
近年、再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、電力系統の安定化に不可欠な「系統用蓄電池」への注目が急速に高まっています。
系統用蓄電池事業への参入を検討されている事業者の皆様の中には、EPC(販売工事会社)として、事業を組成していきたいと思っている方も多いのではないでしょうか。
太陽光発電とは異なり、系統用蓄電池事業では「単に設置するだけ」では収益が安定しません。設置したものが、「市場で収益を生むための最適なパッケージ=商品」として設計されているかが、事業の成否を分けます。
今回は、系統用蓄電池事業を成功に導くために不可欠な「系統用蓄電池の商品づくりのポイント」と、事業組成における具体的な注意点について、現場の実事例を交えて解説します。今後の皆様のお役に立てれば幸いです。
なぜ系統用蓄電池で商品づくりが重要なのか
ここでは、系統用蓄電池において、なぜ商品づくりが重要なのかを、太陽光事業との違いや事例を踏まえてご紹介します。
太陽光発電事業では、FIT(固定価格買取制度)という制度的な枠組みの中で、事業の採算性が比較的担保されていました。極端に言えば、パネルとPCSを設置し、連系できれば、安定した収益が見込めたため、商品力での差別化は重要視されず商品販売のための営業力に重点が置かれていました。
しかし、系統用蓄電池事業は市場連動の収益構造になっている点で、太陽光発電と大きく異なります。蓄電池における 収益源は、卸電力市場、需給調整市場、容量市場などの市場取引です。そのため、太陽光のように「設置」=「収益」というわけにはいきません。
系統用蓄電池では設置した蓄電所を「どう運用するか」、つまりアグリゲーターによる高度な市場運用が収益をあげる上で重要となります。
実際、私たちが耳にする事例の中には、電波が届かない土地で施工してしまい、「蓄電所を運転開始できず、蓄電所を売却しなければならない」といったケースも発生しています。
これは、太陽光のように「設置すれば終わり」ではなく、「設置したものが、市場で収益を生むための最適な組み合わせになっているか」という「商品」としての完成度が問われるためです。EPC(販売施工会社)の会社様が、お客様に安定した収益を提供する「商品」を設計できるかが、事業成功の鍵を握っています。
意識しておくべき3つのポイント
ここでは、系統用蓄電池の商品づくりで意識しておくべき3つのポイントをご紹介します。
系統用蓄電池の商品づくりにおいて、従来の太陽光事業のように「機器の仕入れと販売・工事」だけで完結することはできません。成功する「商品」には、以下の3つの要素が相互に作用し、最適なバランスで組み込まれている必要があります。
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・土地:設置場所の連系条件や行政的な制約。
・メーカー:蓄電池システムの性能、仕様、実績。
・アグリゲーター:市場での運用戦略、実績、収益化能力。
「使用する蓄電池によって必要となる土地の大きさが異なる」
「アグリゲーターによって実績のある蓄電池メーカーが異なる」
「電力管内によって、アグリゲーターの運用方針が変わってくる」
上記のように土地、メーカー、アグリゲーターは複合的に相互に作用しています。
この3つが一つでも欠けたり、ミスマッチを起こしたりすると、前述のような「運用不可」や「事業停止」のリスクが高まります。EPC(販売工事会社)の役割は、この3つの要素を高いレベルで統合した「完成度の高いパッケージ=商品」をお客様に提供することです。
それぞれの具体的なポイント
本パートでは、意識するべき3つのポイントをより深く掘り下げ、設計時に確認の必要なポイントを紹介いたします。
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・土地に関するポイント
土地の条件の確認:電力系統への連系容量・可能時期の確認、接道の有無、近隣住居との距離、近くに高圧線・変電所があるか、といった土地の条件の確認が必要となります。
法令や条例に関する行政確認(許認可):自治体ごとの景観条例、開発許可、農地転用などの厳格な確認が必要です。蓄電池設置に関する条例が整備されていない地域もあるため、事前調整が不可欠となっています。
・メーカーに関するポイント
製品仕様・実績の確認:パワーコンデショナー(PCS)やEMSとうまく連携できるのか確認する必要があります。上記二つとの連携が取れないと、市場でうまく収益をあげることが難しくなります。また、使用するメーカーが日本での実績があるのか確認する必要があります。
アグリゲーターとの相性:選定したアグリゲーターが、そのメーカーのPCSやEMSをスムーズに制御できるか確認が不可欠です。アグリゲーター側のシステムに適合しないメーカー製品は、運用開始後にうまく制御できず、トラブルの原因となります。
・アグリゲーター(運用)に関するポイント
使用する蓄電池メーカーとの相性:過去に運用実績のあるメーカーや、専用のインターフェースが構築されているメーカーを選定する必要があります。前述のとおり、蓄電池とアグリゲーターの連携ができていないと、制御ができず、収益をあげることができない可能性があります。
アグリゲーター費用の確認:運用手数料の仕組みが、お客様の収益を最大化する設計になっているかを確認する必要があります。なぜならアグリゲーターによって、売上連動型や毎月の固定額での支払いなど様々であるため、収支計画に影響が出るからです。
ぜひ今回の内容を参考に系統用蓄電池の商品づくりに取り組まれてみてはいかがでしょうか?
本日も最後までご覧いただきありがとうございました。
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◆会場
船井総研グループ 東京本社サステナグローススクエア TOKYO(八重洲)
※会場に限りがありますため、定員上限に達した場合はご参加受付を終了させていただきます。
◆費用
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・一般価格 30,000円 (税込 33,000円)/ 一名様
・会員価格 24,000円 (税込 26,400円)/ 一名様
◆申込期限
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